はじめまして。制作日誌を開設しました。
はじめまして。8月にシネ・リーブル池袋ほかにて公開される劇場用アニメ『アラーニェの虫籠』(CV:花澤香菜)のプロデューサー、福谷修と申します。
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一人で制作する劇場用アニメとは?
“たった一人で制作する劇場用アニメ”、“一人五役の超絶絵師、前代未聞の挑戦”などというコピーと共に、2016年秋の企画立ち上げから、様々な出来事と紆余曲折を経て、なんとか完成が見えて参りました(いや、まだ油断できませんが)。
どんな映画なのか気になる方は、公開されている予告編をご覧下さい(現在、最新予告編も制作中)。
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一人制作アニメの定義
おかげさまで、会う人会う人から「本当に一人で作っているの?」と聞かれます。
一応、説明しますと、ここで言う「一人で制作」とは、坂本サク監督が演出の他、原作、脚本、絵コンテ、アニメーション、音楽という制作工程を全て一人でこなしていることを指します。
それ以外の部分に関しては、たとえば声優は主演の花澤香菜さんをはじめプロの声優、俳優が参加。アフレコや音響効果、MAにもスタジオを使用しています。
とはいえ、アニメーションの肝心要となるストーリーと映像と音楽に関してはガチで一人で制作しておりますので、このようなコピーとさせていただきました。
「一人で制作するアニメ」といえば、その多くが短編作品であり、長編の(いわゆる)ハイクオリティ・アニメを一人で制作するというのは前代未聞、無謀な挑戦と散々言われました。
では、どうして、この作品を制作するに至ったのか。そして、どのように制作されたのか。
知られざる舞台裏をブログで紐解いていきたいと思います。
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車内でも作画と彩色
それは思い出すだけで、冷や汗と脂汗がにじむ、大きなピンチの連続でした。
私は何度か監督に「アシスタントを付けようか」とたずねましたが、彼は頑として首を縦に振ることはありません
(知り合いの著名なアニメ監督やアニメーター、映像作家の方からも「大変だったらいつでも手伝うよ」と声をかけていただいたのですが、結局、彼らに一度も助けを求めることはありませんでした)。
また、監督が不眠不休で作業に没頭している最中、どうしても都心のスタジオでの音響の打ち合わせがあるため、私が「車でスタジオまで送迎するか、電車でスタジオに行くか、どっちがいい?」と聞いたところ、彼は「車をお願いします」と即答しました。私は(ああ、寝てないから車内で少しでも仮眠を取りたいのかな)と思ったのですが、彼は作業場を出るや、iPadを持って車内で作画や彩色作業を続行しました。駅まで歩く時間ももったいないという感じなのです。行きも帰りも、私のポンコツ愛車のガタガタ揺れる後部座席でひたすら作業に没頭していました。
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一人制作アニメにしか生み出せない魅力
もちろん人によっては、そんな「一人で作るアニメ」と聞いて、「しょぼい」「貧乏くさい」と思うかも知れません。
たしかに大人数で制作する一般的な長編アニメと比べると、見劣りする部分もあるはずです。それでも、私は彼のアニメーション制作を見守りながら、一人で制作する長編アニメならではの面白さや醍醐味を実感し、そして新しい可能性を確信しました。
『アラーニェの虫籠』は坂本サクにしか生み出せない長編アニメ映画です。
その極めて特異で独創的な作品の魅力を、この制作日誌を通して、少しでも伝えられたらと思います。
(つづく)
作品の詳細をお知りになりたい人は、お手数ですが、公式サイトをご覧下さい
(ここに書くと長くなりそうなのですみません)。